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無罪なのに免許証取り消しで職失い 「時間かかった」処分無効判決

重傷事故を起こして自動車運転処罰法違反(過失致傷)に問われ、無罪が確定後も運転免許の取り消し処分が撤回されないとして、会社員の女性(44)=福岡市=が福岡県に処分の無効確認などを求めた訴訟で、福岡地裁(林史高裁判長)は15日、運転免許の取り消し処分は無効とする判決を言い渡した。女性側の代理人弁護士によると、運転免許の取り消しを無効とした判決は初とみられる。  判決などによると、同市早良区国道263号で2017年2月、女性の運転する軽トラックが原付きバイクに追突し、バイクを運転していた少年(当時18歳)が重傷を負った。女性は同法違反容疑で県警の捜査を受け、県公安委員会は同12月、女性に過失があったとして免許を取り消した。  女性は18年5月、同法違反で在宅起訴されたが、福岡地裁は20年5月の判決で「被害者の車両(バイク)が急加速して車線変更した可能性があり、女性に過失を認めるには疑いが残る」と認定し、女性に無罪を言い渡した。判決はその後確定したが、運転免許の取り消し処分は維持された。  

林裁判長は刑事事件の判決と同様、「被害者にも相応の過失があると言わざるを得ない」と判断。県公安委は女性の不注意で事故が起きたとして違反点数を加算し、免許を取り消したが「処分の前提とした事実関係は認められず、処分要件の根幹に内容上の過誤がある」と断じた。  

加えて事故の捜査そのものについても、県警が作成した女性の供述調書には「女性が述べていない内容が含まれている」と指摘。

 

警察の聴取に1週間応じた女性が「体力的、精神的に大きな負担がかかる中、警察官に言われるがまま調書に署名、押印した可能性を否定できない」と推認した。  

判決後、女性は福岡市内で記者会見し「事故から認められるのに時間がかかった」と振り返った

。女性は運送業の仕事をしていたが、免許取り消しで職を失い、その後の就職活動も難航。シングルマザーとして子ども2人を育てていたが、生活を維持できず、一時は別々に暮らすことも余儀なくされたという。  女性は取り消し処分の不服申し立てなどをしなかったが、同席した吉田俊介弁護士は「起訴されて初めて国選弁護人が付いたが、申立期間を過ぎていた。これは他の人にも起こりえる」と説明。無罪後も免許取り消しが撤回されなかったことに、女性は「市民感覚では当然(免許が)戻ってくると思う。制度面も見直してほしい」と訴えた。  判決を受け、県警の桐原哲夫首席監察官は「判決内容を精査した上で適切に対処したい」とのコメントを出した。