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東北中央道・新庄―福島 全面開通 救急搬送時間の短縮など期待

東北中央道は29日、山形県新庄市福島市の間が一本で結ばれる。未接続区間だった東根北インターチェンジ(IC)―村山本飯田ICの8・9キロが開通するためだ。これにより短縮される所要時間は10分ほどだが、救急医療や観光などの面で関係者の期待は大きい。

 東北中央道は、福島県相馬市から秋田県横手市に至る総延長約268キロの高速道。開通により、新庄市中心部から山形市中心部までの所要時間が約10分短縮される。新庄ICと福島ジャンクション(福島市)が1時間50分ほどで結ばれる。

 今回の開通を特に歓迎するのが、尾花沢市消防本部だ。管内の同市と大石田町には、主に入院治療を要する患者に対応する2次以上の救急医療機関がない。管外の市町への搬送が約9割を占め、その多くが東根や村山、山形の各市など中央道沿いの自治体だ。

 だが、これまでは未接続区間と並んで走る国道13号などを経由せざるを得なかった。県消防年報(昨年度版)によると、通報から医療機関の医師への引き渡しに要する時間は尾花沢市消防本部が56・2分と、県平均(39・3分)に比べて約17分長い。一分一秒を争う救急医療にとって、約10分の短縮の効果は大きい。

 市消防本部の救急部門の担当者は「医師が医療措置を始めるまでの時間が短くなり、救命率の向上につながることが期待される」。 観光業界も熱い視線を送る。沿線の村山、尾花沢の両市と大石田町は、そばの名店が集まる「そば街道」で知られる。東北地方整備局によると、3市町のそば街道を訪れる客は、開通区間の延伸につれて伸びている。2015年度に57万7千人だった入り込み客数は、19年度に66万2千人に膨らんだ。福島から訪れる客が目立っているという。

 大石田町では開通日の29日、「新そばまつり」が3年ぶりに始まる。そば街道振興会の芳賀清会長(73)は「最近は福島や関東方面から訪れる方が目立つ。全線開通でさらに増えるだろう」と期待する。

 一方で、未接続区間の解消で打撃を受けるのは、国道13号沿いの飲食や商業の施設だ。村山市は交通量の大幅な減少が見込まれるとして、沿線の「道の駅むらやま」を移転させ、村山インターからの車の流れを呼び込む計画を進めている。

 東北中央道全体でみると開通済みの区間は86%となる。来月20日には新庄市の新庄鮭川ICから新庄真室川ICまでの8・2キロが開通する予定。今後は秋田方面の整備が進む。

 今回の開通区間は無料。開通式典の後、午後3時半から通行できる。