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取り調べを記録 潔白訴え  “密室”の自白強要

捜査員が脅したり、『証拠がそろっている』とうそをついたり…。裁判で違法とされた取り調べは、挙げればきりがない」と松本弁護士。人吉市の一家4人殺傷事件で死刑囚として30年以上の獄中生活を余儀なくされた免田栄さん(故人)が、アリバイを認められて再審無罪となったのは1983年。以降も、自白に依拠した有罪が覆る冤罪[えんざい]は後を絶たない。  そんな状況を打開しようと大阪弁護士会が2003年、逮捕直後の容疑者にノートの差し入れを始めた。不当な取り調べがなかったか、項目ごとにチェックする欄があり、具体的な内容も書き込める。供述調書への署名押印を拒めることなど、容疑者の権利の説明も盛り込んだ。  取り組みは全国に広がり、県内でも否認事件などで積極活用されている。発案から携わった秋田真志弁護士(大阪)は強調する。「密室の取り調べを“可視化”する狙いで、大きな成果があった。ただ限界もある。録音・録画の全件導入はもちろん、日本も弁護士の立ち会いを認めるようにすべきだ」

 

 

熊本県警をみると、19~21年に取り調べの全過程で録音・録画を実施したのは211件。刑法犯の逮捕者に占める割合は13・1%だった。刑事企画課の清田恭弘次席は「義務化対象の事件を中心に適正に実施している」と強調するが、ある捜査幹部は「取り調べは容疑者と人間関係をつくり、自身に不利なことを話させる場。カメラの前では難しい」と明かす。  改正刑訴法は6月に施行3年が経過。付則に定められた見直し時期を迎えた。日弁連は、録音・録画の義務化について「刑事司法改革の歴史的な一歩を踏み出した」と評価する一方、対象が全体の3%に過ぎないとして、任意捜査や参考人聴取を含む警察・検察の全ての取り調べに拡大するよう求める。  野平弁護士は「志布志事件がそうだったように、違法な取り調べは任意捜査の段階でも起きる。冤罪をなくすためには、さらに踏み込んだ可視化が必要だ」と指摘する。